約 1,319,694 件
https://w.atwiki.jp/rockmanxdive/pages/42.html
この項目は現在制作途中です #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 性能スキル龍炎刃 落鳳破 パッシブスキルカウンター加速 真落鳳破 セイバーの達人 龍炎舞 スキンゼロWコーデ入手方法 新規解析ボーナス 育成パッシブスキル解放素材カウンター加速 真落鳳破 セイバーの達人 龍炎舞 入手方法 特徴 性能 スキル 龍炎刃 エネルギーを炎に転換し、上空に向けて攻撃を放つ。範囲内の目標に攻撃力105.00%のダメージを与える。 燃焼 命中した目標を燃焼状態にし、0.5秒ごとに攻撃力1.58%の燃焼ダメージを与える。 クイック冷却 クールタイムが20%短縮される。 波断撃 龍炎刃発動時、前方に斬撃をとばし、目標に15.75%のダメージを与える。 落鳳破 拳を地面に叩きつけ、放射線状にエネルギーを発射。弾1つにつき攻撃力90.0%のダメージを与える。 防御シールド ダメージ軽減効果のあるシールドを展開。攻撃力36%のダメージを防ぐ。 ダメ率アップ ダメージ倍率が5%アップ。 速度妨害 命中した目標を減速状態にし、移動速度を一定時間27%減少させる。 パッシブスキル カウンター加速 攻撃を受けた際、一定確率で加速状態になり、移動速度が40%上昇。 真落鳳破 落鳳破のエネルギー弾が増加。(同時に9発) セイバーの達人 セイバー系武器装備時、すべての攻撃によるダメージが15%アップ。 龍炎舞 龍炎刃を3回発動後、次の龍炎刃のダメージが12%上昇、バトルモードでは命中後、相手を空中に持ち上げることができる。 スキン ゼロWコーデ #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 入手方法 守れ!おかし工場奪還作戦のイベント達成度報酬 ※この断片を売却すると再入手が不可能なので注意※ 新規解析ボーナス 攻撃+16 ライフ+32 防御+8 新規解析ボーナスはゼロWコーデを解析することで総戦闘力に加算される(ゼロWコーデを装備する必要はない) 育成 パッシブスキル解放素材 カウンター加速 真落鳳破 セイバーの達人 龍炎舞 入手方法 ダイブカプセル 開催内容により、排出対象でない場合があります。 ショップ 常設ショップ(キャラ断片) ストーリーステージ ストーリー:工場(ノーマル)星獲得報酬 バトル報酬 通常バトル 特徴 ロックマンXのもう一人の主人公。 ロックマンXから登場し、X2で条件によっては敵対、X3では一時的に使用可能となりX4から正式にプレイアブルキャラとなった。 XDiVEではセイバーの達人のパッシブスキルで全体の攻撃力を底上げできるのが強み。 龍炎刃はジャンプ中は使用できないので二段ジャンプ後に龍炎刃で疑似三段ジャンプ…といったような動きは取れないので注意。 また、龍炎刃はその性質上接近して発動する必要があるので特に接触ダメージ判定を持つ敵との距離は見極めたうえで使用するのがベスト。 落鳳破はパッシブスキルで真落鳳破にすると攻撃範囲が広がる。 また、防御シールドも装備できるためある程度のゴリ押しや接触ダメージの回避に使える。 ただし、防御シールドは攻撃力36%のダメージを防ぐ程度の物なのであまり過信しすぎないこと。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1155.html
ともだち~ ずっとともだち~♪ ギーシュは上機嫌だった。 ずっとともだちいな~い♪ 鼻歌まで歌ってゴキゲンである。彼は両手で何か大きな箱を抱えて 中庭を歩いていた。箱の中にはギッシリと、色んな形の小瓶が詰められて いる。小瓶――そう、香水である。「香水」の二つ名を持つ彼女、 モンモランシー・マルガリタ・中略・モンモランシに、彼はこの香水の山を プレゼントするつもりなのだ。こいつを決め台詞つきでプレゼントした 時の彼女の反応を考えると、ギーシュはニヤニヤが止まらなかった。率直に 形容すると、いわゆる「アホ面」というやつだ。そういうわけで、彼はこの後の 勝利を確信しながら、それはもう上機嫌でモンモランシーの元へと向かって いたわけである。すると後ろの方から彼を呼ぶ声が聞える。 「ギーシュ!あなた何を持っているの?」 この声は・・・!ギーシュは確信した。モンモランシーだ!少し予定と違うが まぁいい!コホン、と一つ咳払いをすると、 「ああ、まるでセイレーンの歌声のようなその声!君はモンモランシーだね! なんという偶然、いやこれは始祖ブリミルの与えたもうた奇跡!僕も今君に 会いに行こうと・・・」 優雅な仕草でギーシュが振り返ったそこには、 般若のような形相で仁王立ちするケティの姿があった。 「ギーシュさま・・・」 背後からゴゴゴゴゴゴという擬音を引き連れて、ケティは死神のような眼で ギーシュを睨む。 「やはり・・・・ミス・モンモランシーと・・・・・・」 「ケッ、ケケケケケケティ!!ちっちががちが違うんだよこれは!!これは 先生に頼まれて――」 バッチィィイィン!!! 「さよならギーシュさま・・・死ねッ!!!」 へなっぷすいませんと叫びながらフッ飛ぶギーシュに、ケティはもはや一瞥も くれず歩き去った。 見事なきりもみ回転でフッ飛んだギーシュは地面に倒れたまましばらく痛みを こらえていたが、ハッと香水のことを思い出して跳ね起きた。 「ああああ!!こっ、香水ッ!割れてないだろうなぁ~!?」 ギーシュは地面に跪き、急いで香水をかき集める。よかった、どれも割れては ないようだ。使い魔に手伝わせてガチャガチャと箱に放り込む。草や土が ついてるものもあるだろうが・・・モンモランシーなら適当に言い繕えば ごまかせるだろう。ギーシュはそう判断すると、香水を仕舞い終わった箱を 持ち上げて歩き出した。さっきの事は色んな意味で痛かったが、この傷は モンモランシーの笑顔で癒してもらおう・・・などと考えると、ギーシュの片側だけ 腫れた顔はまたニヤニヤと歪むのであった。しかし――、不幸とは往々にして 連鎖するものである。ニタニタと上の空で妄想にふけっていたギーシュは、 前から歩いてくる少女もまた考え事で前など見ていなかったことに気付かなかった。 そして。 ドンッ!! 「うわッ!?」 「きゃあッ!!」 二人はハデにぶつかり、ハデに吹っ飛んだ。 「いったたたたた・・・ き、君ッ!前はちゃんと見て・・・アッー!!!」 なんと不幸な偶然か、再びギーシュの手から落ちた香水の山は、2度目の 衝撃に耐えることは出来なかった。ギーシュと少女の周りに散乱した小瓶、 その実に3分の2が無残に砕け散ってしまっている。 「なッ・・・なッ・・・なんということだ・・・!大枚はたいて買ったモンモランシーの ための香水が!!」 絶望と怒りに打ち震えるギーシュ。 「君ッ!!」 それがないまぜになった感情をぶつけるべく、ギーシュはキッと少女を睨む。 「責任は取ってもらうぞッ!!ゼロのルイズッ!!」 ルイズは悄然とした表情で中庭を歩いていた。ギアッチョはただ訳も分からず 異世界へ送り込まれてきただけの平民ではない。唯一心を許せる仲間達を 皆殺しにされ、その上リーダーを一人残したまま自分まで殺されてしまったのだ。 もしもギアッチョが自分だったら、とルイズは考えた。唯一無二の親友である アンリエッタが、敬愛するワルドが、そして家族が皆殺しにされてしまったら。 そう考えると、今までギアッチョにされた仕打ちなんか全て忘れて、ギアッチョの 隣で泣きたくなる。ギアッチョの怒りは、悲しみは、痛いほど分かっている つもりだった。それなのに、自分はギアッチョにあんな酷い事をしてしまった。 どれだけ悔やんでももう遅い。自分とギアッチョの心には、きっともう修復なんて 不可能な溝が出来ている。――ギアッチョは厨房の平民達の屈折のない善意に 囲まれていた。自分じゃきっと一生かかっても素直になんかなれない。自分は あの輪の中には永遠に入れない。ルイズはそう確信していた。 ルイズは幼い頃から周囲にバカにされ続けてきた。例え口には出されなくても、 周囲の眼は「ゼロだ」「落ちこぼれだ」という意識を持ってルイズの心に突き刺さる。 幼いルイズが心無い他人達から身を守るには、虚勢という張子の盾を持つしか なかったのである。そしてその盾はもはやルイズの心と完全に一体化し、 ごく一部の親しい人間を除いて、ルイズはその心の深奥を誰かに吐露する 事など出来なくなってしまっていた。 ――あいつの居場所は・・・私の隣じゃ・・・ない ルイズはもう一度呟き、そして悲しい決意をした。やっぱりダメだ。元の世界に 戻るにしろ、ここに留まるにしろ、あいつは私の使い魔なんかでいるべきじゃ ない。あいつを元の世界に送り返す方法か・・・もしくは契約を解除する方法。 どっちを選ぶかはギアッチョ次第だが、とにかくどちらかを見つけなければ いけない。そんな事を考えながらルイズは図書室へと歩き出し――そして、 ギーシュと衝突した。 「責任ですって!?前を見てなかったのはあんたも一緒でしょ!!どっちか 一人でも前を見ていたらぶつかりなんてしないわ!」 「黙りたまえゼロのルイズ!僕達の周りを見ろッ!!僕が大金をはたいて 買った香水だぞッ!!責任を取るのはそっちだ!!」 ルイズはそこで初めて周囲に眼をやり、香水瓶だったものの惨状を知った。 「フンッ!どうせモンモランシーにあげるつもりだったんでしょう!!あんた みたいな趣味の悪い男にはお似合いのプレゼントね!!自分の不始末は 自分でぬぐいなさいよッ!!」 「言ったなゼロのルイズッ!!大体どうして君がまだここにいるんだ!? 魔法も使えないメイジが魔法学院にいるなんてお笑いだな!!君がとっとと ここを辞めていれば僕がここでぶつかることもなかったんだ!!土下座して 謝りたまえ!!そしてこいつを全部弁償しろッ!!そうすれば君がこの学院に 居続ける事を許してやろう!!」 「・・・なんですって・・・!!何も・・・何も知らないくせに・・・ッ!!許さないわ ギーシュッ!!決闘よッ!!!」 「ゼロのルイズが決闘だって!?アッハハハハハ!!いいだろう、女性に 手は上げない主義だが・・・受けて立とうじゃあないかッ!!僕が勝ったら 君は僕に土下座で謝った後にこいつを全て弁償し、その上でこの学院を 出て行けッ!!いいな!!」 「・・・上等じゃない・・・!!私が勝ったらもう二度と私を『ゼロ』だなんて 呼ばせないわッ!!ギーシュッ!!」 「いいだろう・・・フフフ・・・『君が勝ったら』ね!!こいつは傑作だ!! アッハハハハハハ・・・!!」 こいつは自分の勝利を微塵も疑っていない。ルイズは悔しさで涙が出そう だった。目頭が熱くなるのを必死で堪えていたその時、 バグシャアアッ!! 「あぁあぁああーーーーッ!!!ぶっ、無事だった香水をぉおお!!」 壊れることなく残っていた香水瓶を踏み潰しながら―― ギアッチョがそこに立っていた。 「・・・なッ・・・何してんのよッ・・・っく・・・ギアッチョ・・・!私を笑いに来たの なら・・・帰りなさいよ・・・!あんたには・・・うっく・・・関係ないでしょ・・・ッ!」 悔しくて情けなくて、ルイズはついに涙を堪え切れなかった。涙を見せまいと うつむきながら、ルイズは精一杯の強がりを言う。こいつには、ギアッチョに だけは、こんな場面を見られたくはなかった。きっとこいつは完全に幻滅した。 そう思うと、ルイズの涙はいよいよ量を増して溢れて来る。 だが―― 「いいや・・・関係あるね てめーはさっき言ったよなぁあぁ~~ 主の不始末は 使い魔の不始末だってよォォーー・・・!」 そこまで言うと、ギアッチョは色をなくした眼でギーシュを睨む。 「ルイズの不始末は・・・オレが引き受ける ギーシュとか言ったな・・・てめーの 決闘の相手はよォォーーー!!このオレだぜマンモーニッ!!!」
https://w.atwiki.jp/wiki15_dol/pages/751.html
No545ゼロ AP1900/ DP2000 CP300/天空の悪魔 解説
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/64.html
前ページ次ページゼロの白猫 憤懣やるかたなかったが、一人でなんとか慣れない掃除を終わらせたルイズ。 しかしかなり時間がかかってしまい、現在昼食を食べられるかどうかが危うい時間帯である。 この昼食を逃すことは、今日のルイズにとって非常にまずい。掃除によって疲弊した体は、貧欲に補給を訴えていた。要するに、とてもお腹がすいているのだ。 だが貴族たる者、廊下で走ることはまかりならぬ。つまり彼女に今できることは、長い歩幅でできる限り速く足を前後に動かすことだ。 そんな理由から、ずかずかずかと大股でルイズは大急ぎで歩いていた。 (ほんっとにレンの馬鹿! 主人が困ってるのに放って行くなんてどういうつもりなのよ!) 急ぎの道中で考えるのはしかし昼食の事ではなく、レンの事。猫が掃除を手伝うことはできないことくらい承知しているルイズ。でもそんなの関係ねぇ、と自分だけ先に出て行った使い魔に怒りを滾らせていた。 レンは他の使い魔と違い、人間並みの知性があるはずである。それなのに主人を見捨てていくなどひどいではないか。 心の中で悪態を付きながら、食堂へ到着する。早くご飯にありつこうと食堂に入ろうとしたところで、白い毛玉が入り口付近にいることに気が付いた。レンである。 「レン! 何処行ってたのよあんた! 主人をほっぽって行くなんて使い魔失格よ!」 ルイズは空腹のことも忘れてレンに詰め寄る。レンはルイズの怒鳴り声に動じる様子もなく、ついっと自分の口に咥えた物をルイズに差し出した。 「なによコレ? ……くれるの?」 レンが咥えていた物を手に取ってみる。それは細工が施されたガラスの小壜だった。中には何か液体が入っている。 蓋を開けると、ふわりと香りが漂ってきた。どうやらこれは香水のようだ。そして、香水と言って思い出す人物が一人。 「多分、モンモランシーの作ったものね、これ」 モンモランシー。水のメイジであり、二つ名は『香水』。様々な水の薬品を作ることを得意とし、彼女の作る香水は女学生たちの間で流行っている。 恐らく誰かが落とした物をこの猫は拾ってきたのだろう。主人へのお詫びのつもりだろうか。そう言えば猫は狩ってきた獲物を主人に見せる習性があったっけ、とルイズは思い出した。 「レン。コレは落とし物でしょ? なら元の持ち主に帰さないと」 こん、とレンの小さな額に握った拳を当てる。無論優しく当てるだけ。 「ま、使い魔として主人のために動いたのは認めたげるわ、これからもがんばんなさい」 ひとまず機嫌が直ったルイズ。さすさす、とレンの小さな頭を撫でてやった。猫の耳が彼女の手で折られるたびにピンと立ち上がる。うむ、愛い。 入り口の前で佇むレンに見送られながら食堂へ入るルイズ。食卓に付く前にモンモランシーを探す。彼女の作ったものなら彼女に渡せばいいだろう。彼女から別の誰かに売られたものだとしても、制作者の手に戻るならそう問題はあるまい。 すぐに食事中のモンモランシーを見つける。彼女の金髪縦ロールはよく目立ち、非常に発見しやすかった。 「モンモランシー。これ、あんたのじゃない?」 「え?」 ルイズから差し出された香水壜を見て、モンモランシーの顔色が変わった。乱暴にルイズの手から壜を受け取ると、なにやら険しい顔で壜の底を確認する。 「……間違いないわ、印が付けてある! ルイズ、コレどうしたの!?」 「私の使い魔が拾ってきたのよ。何処かに落ちてたんじゃない?」 「あの馬鹿! 私がせっかく作って上げた物を……!」 ガタンと音を立てて席を立つと、先程のルイズのようにずかずかと食堂内を歩いていく。 「一体何よ、あれ?」 「あ、ひょっとしてあれ、ギーシュにあげた香水壜だったんじゃない?」 モンモランシーと相席していた女生徒がルイズの疑問に答える。 「今、いつになったらギーシュとくっつくのよって聞いてたんだけどね、どうやらモンモランシー、ギーシュにお手製の香水をあげたらしいのよ」 「何、あの二人って恋仲だったの?」 「まあ正式にお付き合いしてるんじゃないらしいけど、モンモランシーがギーシュに気があるのはバレバレだったじゃない。あの二人、幼なじみで付き合いも長いって言うし」 ギーシュ・ド・グラモン。『青銅』のギーシュと呼ばれている。土のドットメイジで、青銅のゴーレムを操ることができる。しかも同時に7体。 ドットメイジでは中々の実力を持つと言えるだろう。 「けど、ギーシュの方がアレだからねえ。モンモランシーとしてはちょっと自分からは言いにくいんじゃない?」 「アレって……ああ、女癖?」 ギーシュはかなりの気障男なのである。制服を胸元まで開いたデザインに改造したり、杖を薔薇の造花にしたり。自分を薔薇のように美しくしたい、ということらしい。 そんな彼はかなりの軟派少年。今も複数の男性クラスメートに、 「ギーシュ、お前は今誰と付き合ってるんだよ!?」 と面白がって聞かれているところである。 ルイズからも確認できた様子にモンモランシーが気づかぬ訳はなく、ずしずしとギーシュに近づいていく。だがしかし、ギーシュはモンモランシーの接近に気づかず、こんな発言をしてしまったのた。 「いやいや君たち、薔薇は全ての女性のために美しく咲くものなのだよ。よって今僕が付き合っている女性はいないよ」 ぴたり。 止まった。先程まで騒いでいた男性陣が。いや、食堂内のざわめきが。 原因は、恐らくギーシュの後ろで止まっているモンモランシーだろう。 モンモランシーが今どんな顔をしているのかは、ルイズの角度からは分からない。だがしかし、彼女は鬼のような形相をしているのではないかと思った。 だってほら、あんなに男たちがガタガタ震えているんだもの―― 「ん? どうしたんだね君たち? そんなに『僕が』『誰とも』『付き合っていない』のが意外かい?」 嗚呼、ギーシュ・ド・グラモン。君が空気を読めない奴だというのはよく分かった。けど、わざわざ地雷原を簀巻きになってゴロゴロ転がるようなマネをしなくてもいいじゃないか。 ぱちゃぱちゃぱちゃ。 「うっ!?」 自身の金髪に降ってきた水に驚き、ギーシュは辺りを見回す。 そしてようやく気付くのだ。自分に香水を頭からかけているモンモランシーに。 「そう、ギーシュ、貴方今、『誰とも付き合っていない』のね?」 「も、モンモランシー……!?」 ぱちゃぱちゃぴちゃ。 「薔薇には私が作ってあげた香水なんて必要ないのよね。むしろ他の花を愛でるにはこの香りは邪魔よね? だからルイズの使い魔にあげちゃったんでしょ?」 「待ってくれ、モンモランシー」 「ええ聞くわ。この香水を貴方にかけ終わるまでね」 ぴちゃり、ぴちょ。 ポケットに入るようなガラスの小壜には少ししか入れる容積が無い。もう既に香水は殆ど流しきられ、ぽたぽたと数滴垂れるのみになった。 「さっきのは言葉の綾なんだ! 僕が愛しているのは君だけだよ!」 「ギーシュさま!」 ぴちょん、ぽたり。 空気を読めない人はギーシュの他にも居たらしい。二人だけの修羅場に入っていったのは、一年生と思しき女性だった。 「ケティ!? す、すまないが今は取り込み中なんだ……」 「ギーシュさま、以前私を馬に乗せていただいた時、『僕の瞳に映るのは君だけだよ』と言って下さったのは、嘘だったのですか!?」 訂正。空気を読めなかったのではなく、彼女も当事者だったらしい。 ざわ、とクラスメート達が騒ぎ出す。おいおいギーシュの奴二股かよ。え、モンモランシーが本命だったんじゃ? いやキツイ性格のモンモランシーから乗り換えたんじゃないのか? と、憶測を述べる貴族が一杯だ。 そして騒ぎの中心たるギーシュの顔はひきつった笑顔を浮かべていた。 ぽた、っ。 そうして、香水の最後の一滴が、壜から零れ落ちた。 「そう、その子が貴方が愛でる花なのね? 一年生の女子に手を出してるっていう噂は本当だったんだ」 「だから違うんだ! 彼女とはただ馬で遠乗りにいっただけで」 「さよなら」 ギーシュに弁解の時間など与えず、きびすを返して食堂から走り去るモンモランシー。その時見えた表情は、鬼の如く怒っていたが、同時に目尻が光っていたようにも見えた。 「待ってくれ、話を聞いてくれモンモランシー!」 「ギーシュさま……」 モンモランシーを追おうとしたギーシュだが、全ての女性を愛でるという自負から、女性に悲しげな声で自分の名を呼ばれては止まらざるを得なかった。 「やはり、モンモランシーさまとお付き合いをされていたのですね?」 「いや、違うんだよ僕と彼女は付き合っている訳じゃ」 「付き合っていなくても『僕が愛しているのは君だけ』と言うのですか!?」 ギーシュの言い訳を遮って叫ぶと同時に、ケティの渾身の平手打ちが入った。ぱあん、と乾いた音が静まり返った食堂中に響き渡る。 「最低です!!」 モンモランシーと同様、ケティも食堂から去っていった。そして、彼女の瞳からははっきりと涙が流れて頬を濡らしていた。 ギーシュはぽたぽた頭から香水を垂らしたまま、真っ赤な紅葉の咲いた自分の左頬を押さえている。 しばらくそのまま固まっていたギーシュだったがやがて立ち直ったのか、誰に向けて言うでもなく一言。 「彼女たちは薔薇の意味を理解していないようだ」 おいおいそりゃあないだろう。 食堂の皆の心が一人を除いて一つになった。とても素晴らしいことの筈なのに、虚しさしか感じないのは何故だろう。 ルイズは気を取り直して食事をすることにする。自分はただ落し物を製作者に返しただけ。悪いことは何もしていない。それより腹の虫が鳴く前にご飯を食べることのほうが今は重要である。 周囲の人間も気まずさを感じながら食事に戻る。できる限りギーシュに触れないような空気が形成されながらも、皆ちらちらとギーシュを伺わずにはおれないようだった。 とにかくいつも通り始祖ブリミルへの感謝を感謝をささげ、いざ昼食にありつこうとしたところで、ふと気づく。 食堂の入り口にまだレンがいたのだ。そして、ギーシュがなにやら険しい瞳でレンのことを睨んでいる。 ギーシュが歯噛みして顔が醜く歪む。怒りに満ちた顔だ。モンモランシーやケティのように大股で食堂の入り口へと向かっていく。ルイズは慌ててギーシュを止めた。 「ちょっとギーシュ! あんた私の使い魔に何する気!?」 「別に何も! ただ僕を侮辱してくれた礼はせねばならないと思ってね!」 ルイズには彼が何を言っているのか理解できない。要するにギーシュが落とした香水壜をレンが拾ってきたことに難癖をつけて八つ当たりをしようとしているだけではないか。 「あんたがモンモランシーから貰った香水を落とすのが悪いんでしょ! レンはただ拾ってきただけじゃない!」 「違う! それだけじゃない! あの猫は今僕のことを嘲笑ったんだ!」 「はあ?」 二人に振られたショックで頭心が壊れたのか、それともモンモランシーの香水が目に入って幻覚でも見たのか、はたまたケティの平手打ちで頭がシェイクされすぎたのか? と疑いたくなる言動である。 確かに昨日夢の中で見たレンなら、今のギーシュを見て冷笑の一つでもこぼすかもしれない。しかし今のレンは猫の姿。猫などの獣が笑うなんて事はない……筈だ。 とにかく、今回の件はギーシュの二股が全ての原因。ルイズやレンが責められる謂れ等全く無い。 「元を正せばあんたが原因でしょ! モンモランシーがせっかくあんたに香水を作ってあげてるのに、あの一年生にまで手を出すってどういうことよ!」 「だから! 彼女とは街へ馬で遠乗りに出かけただけなんだ! それだけなのにどうしてこんな仕打ちを僕が受けなければいけない!?」 「それがモンモランシー達を傷つけたからでしょ!」 「第一何故君は僕じゃなくモンモランシーに香水を渡したんだね!? 壜の底には僕の為の印がついてあったんだから、それくらい察してくれても良いじゃないか!」 「あんたたちの取り決めなんて何で私が知ってなくちゃならないのよ!? いいかげん黙りなさいよ、あんた今すっごくかっこ悪いわよ! ほんと、モンモランシーもケティとか言う娘もあんたを捨てて正解ね!」 「格好悪い!? 僕が!? 言うに事欠いて、このゼロがあ!」 衝動的にギーシュが手を振り上げる。ルイズは反射的に顔をかばって目を閉じた。 ごん、とやたら大きい音が食堂内に響く。それ以降は何も聞こえず、ルイズが予想していたような衝撃もやってこない。 「……?」 ルイズが恐る恐る目を開けてみると、そこにはぐったりと倒れたギーシュがいた。 「は?」 食堂内、本日二度目の時間停止である。はらはらと二人のやり取りを見ていた野次馬も静まり返ってしまっていた。 ルイズは何もしていない。そりゃ口論中はひっぱたいてやりたいとも思っていたが、今は反射的に自分の身を守ろうとしただけだ。彼に触れてさえいない。ましてや魔法を使ったわけも無い。 「ちょ、ちょっとギーシュ?」 ゆさゆさと揺さぶってみるが反応は無い。傍目にはただ眠っているようにしか見えなかった。 暫く時間が経って、ようやく生徒が騒ぎ出す。誰一人として何が起こったのか正確に把握している者は居ないようだった。 「だれか、水のメイジは居る? 一応診てみて」 ルイズの呼びかけに何人かの生徒が寄ってきてギーシュを診断する。 結果、どこにも体の異常は見られない。コブどころか擦り傷一つ確認することはできなかった。 ただ、どうしていきなり倒れたのかが分からない。まるで誰かが『スリープ・クラウド』でも唱えたかのような突然の昏倒だったが、誰もそんなことをした様子は無い。それに『スリープ・クラウド』なら現れるべき眠りの雲も現れなかった。 とにかく医務室へと運ぶことになった。コモン・マジックの『レビテーション』で彼を浮かべて何人かが食堂を出て行く。 「何だったのよ……あのばかギーシュ」 本当についていない。教室の後片付けといい、今の理不尽な八つ当たりといい、今日はブリミル滅だろうか。 そういえばいつの間にかレンの奴どっかいっちゃったな、と思いながら、ようやくルイズはチーズのたっぷりかかったハンバーグをほおばった。 「……はっ!?」 意識が覚醒し、目が開く。呼吸は荒く、全身汗だくだ。熱い。体が熱い。肺には濁った空気が溜まって満足な呼吸もさせてくれない。 「がっは……うああ」 「ギーシュ? 目が覚めた?」 「うわあああああああああああああああああ!?」 隣から聞こえた声に悲鳴を上げるギーシュ。その声は今まで優しく自分を責め立てていた彼女の声だったからだ。 「モモモンモモンモンランシー!?」 「何よ大声出して、人の名前くらいちゃんと言いなさいよ」 ベッドの傍に置かれた椅子に座ったままジト目でモンモランシーは言う。 「わ、悪かった! 僕が悪かった! 謝るからもう踏むのは! せめて靴は勘弁してくれ……!!」 「まだ寝ぼけてるの? それともまだ調子が悪いの?」 呆れたような声で答えるモンモランシーにギーシュは違和感を覚える。これはさっきの彼女ではない、普段のツンケンさが愛おしい元のモンモランシーだ。 その事実に気づいたギーシュは気分を沈めて周りを見回す。見覚えのある部屋だが自分の部屋ではない。確か学院の医務室だ。様子のおかしかったモンモランシーと居た自分の部屋ではない。 「じゃあ、さっきのは夢、だったのか」 「一体どんな夢だったの? いえ、やっぱり言わなくて良いわ」 そういってモンモランシーは何故かギーシュから目を逸らす。その様子にギーシュの背中に冷や汗が流れた。 「あ、あのだねモンモランシー、僕は寝言で何か言っていたかい?」 できる限り笑みを取り繕って問うギーシュ。その質問に何故かモンモランシーの頬が朱に染まる。反対にギーシュは嫌な予感に顔を青くした。流石青銅だ、青くなってもなんとも無いぜ! 「えーっと、何か私の名前とごめんなさいって言葉を何度も……。それ以外にも色々……」 その色々、という部分はごにょごにょと言葉を濁してしまうモンモランシー。もはや冷や汗が止まらないギーシュ。 まずい、この空気は非常にまずい! と、何とか話題を変えるべく思考をめぐらせる。 そして、自分がモンモランシーとケティに振られた後、ルイズを衝動的に叩こうとした後の記憶が無いことに気がついた。 「モンモランシー、僕はどうしてここに居るんだい?」 「分からないの? 私も聞いた話だけど、ルイズを殴ろうとして何故かあなたが倒れたみたいよ。だから医務室に運ばれたの。血圧を上げすぎたせいじゃないかとか言われてるけど」 「そうだったのかい? あの時行き成り目の前が暗くなって、その後は何も覚えてないんだ」 「浮気した上に無関係のルイズまで殴ろうとしたから、始祖ブリミルから天罰でも下ったんじゃない?」 「だから違うんだ! モンモランシー、彼女とは馬に遠乗りに行っただけだって! 僕の心に住んでいるのは君だけなんだ!」 「ギーシュ、あなたもし私とステファンが一緒に食事をしてたらどうする?」 「ステファンに決闘を申し込む!」 「そういうことよ」 即答してからはっとなるギーシュ。自分の行動でモンモランシーが怒り、傷ついていたことがようやくほんの少しだけ理解できた。 だがモンモランシーはもはやギーシュを意に介さずに、冷たい瞳で彼を一瞥しただけで立ち上がる。 「待ってくれモンモランシー! 待って……!」 「その様子ならもう大丈夫よね、それじゃさよなら」 ベッドの上で必死に手を伸ばすも届かない。美しい縦ロールを翻してモンモランシーは医務室から退室してしまった。 「モンモランシー……」 ギーシュは悔やむ。何故自分は出て行く彼女を引き止められなかったのか。 だが、今彼はベッドから出ることはできなかった。自分にかけられているシーツをめくることはできなかったのだ。 だって、そんな事をすれば、夢の影響での、下着が、ズボンが。 「ちくしょう……」 シーツの隙間から、中に充満した栗の花のような青臭い臭いが漂ってくる。せめて、この惨状をモンモランシーが気づかなかったことをブリミルに祈る精童のギーシュであった。 「昼間は災難でしたわね、マスター」 夜、ベッドに入り、気がつくと昨夜の雪原にルイズは居た。眼前では耳の長い人間の姿になったレンが微笑んでいる。 ルイズとレンはテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。広大な雪原にぽつんと存在する椅子に座る様は中々シュールだ。 いきなり始まった会話に目を白黒させるルイズ。二回目とはいえ、まだこの変な空間には慣れない。 「何よ、あんたが壜を拾ってきたのも原因のひとつじゃない」 「まあひどい。私はマスターを元気付けようとしてやっただけですのに」 「拾ってきた他人の香水を喜ぶ貴族なんて居ないわよ」 口調こそ悲しんでいるそぶりのレンだが、顔は相変わらず皮肉げに微笑んでいる。本気で言っているわけでは全くないようだ。 ルイズもこんな事を言っているが、本当はレンを責めたりする気持ちは全く無い。だがこの生意気で口元に酷薄な笑みを貼り付けている幼女をみると、何か素直になるのが悔しくなるのだ。 「マスターに危険が及びそうになった時は助けたではありませんか」 「何よソレ? あんたが何時私を助けたっての?」 「あの優男に殴られそうになった時、眠らせたのは私ですのよ?」 「……それ、ホント!?」 明かされる驚愕の真実に、ルイズは思わず机に身を乗り出してレンに詰め寄る。そんなルイズを手で制すると、自身の真紅の瞳を指差した。 「私の目。どうやら眠りの魔眼になっているようなの。魔眼としての格は高くないけど、夢魔の私にはうってつけね。眠らせてしまえば、後は夢の中で好きに料理できるわ」 「まがんって何?」 「え? 知らないの……って、そっか、こっちと向こうじゃ魔術とか超能力の常識が違うのよね。簡単に言うと、見ることで魔術的な効果を発揮する眼のことよ。相手を魅了したりする魔眼が有名ね」 「魅了って……本当なら凄いわね。魅惑の薬は禁制の品に指定されてるのに、見るだけでいいなんて」 「けど、目を合わせないと効果は無いわ。だから大人数の相手には向かないわね」 「でも、詠唱も杖も要らないってことでしょ? それって先住魔法!?」 自分の使い魔のポテンシャルに興奮してルイズの鼻息が荒くなる。ぐぐぐと近寄ってくるルイズをぐぬぬとレンは押し戻していた。顔が近いし。 「何、その先住魔法って?」 「知らないの? って、さっきと逆ね。先住魔法って言うのは、エルフとかが使う、メイジの4系統魔法とは違った魔法のことよ。あんた、見た目エルフみたいだし使えてもおかしくないわよね?」 「聞くだけじゃ私の使う魔術と一緒かは判断できないわね。たぶん違うと思うけど。でも、この魔眼はそっちが私に与えたものでしょ? ならルイズの方が詳しいんじゃないの?」 「へ? 何の話よ?」 「私、魔眼なんて持ってなかったもの。使えるようになったのはこっちに来てから。貴方が私に刻んだルーンが関係してるみたいなんだけど」 「ふーん? そういえば、只の猫が使い魔になると喋れるようになるとかいう例もあったらしいわね」 「……随分ランダムな効果ね、召喚も契約も」 「良いじゃない。私の使い魔になって危険が去って、新しい力まで手に入れられたんだから」 顔をしかめてレンは言うが、なにやらレンが役立ちそうなことに上機嫌になっているルイズにはあまり通じていない。 「ところでレン。あんた夢魔なのよね?」 「何を今更言ってるの? 夢の中でこうして話してるじゃない」 「さっき、『眠らせてしまえば好きに料理できる』って言ってたけど、あんたギーシュの夢に何かした?」 「ああ、その話?」 医務室に運ばれたギーシュは、結局そのまま午後の授業に出てくることは無かった。ついでにモンモランシーもいなかった。どうやらギーシュに付き添っていたらしい。 お別れしながら何故傍に居てやるのかは分からない。恋する乙女心は難解である。 ギーシュの話題を上らせると、レンの笑みが深いものになった。あの、ルイズを『吸い尽くす』と脅してきた時に浮かべたものと同じだ。思わず椅子ごと後ずさルイズ。 「マスターに手を出そうとした罰として、踏んであげただけよ。優しく、ね」 くすくすと実に楽しそうにレンは嗤う。この笑いを見るたび、ああ、こいつ性格悪いなー、とルイズは再確認するのだった。 踏まれたというギーシュは、まあ自業自得だろう。女の子二人を泣かせた上にルイズにまで手を出そうとしたのだ。こんな小さな幼女に踏まれるくらいご愛嬌で済ませられるだろう、とルイズは判断した。 もっとも。ルイズの解釈している『踏む』と、レンの実行した『踏む』が一致しているとは限らないのだが。 「役に立ったでしょう?」 「そうね。使い魔の仕事としてはまあまあの評価を上げてもいいわ」 しっかり主人の身を護った使い魔に対してこの言葉。とことん素直でないルイズである。だが気にする様子も無くレンは主人に微笑を向け、こんなことを言い出した。 「ならご褒美をくださいな、ご主人様」 「ご褒美ぃ? 思ったより厚かましいヤツね、あんた」 「いい労働にはいい報酬が必要なのですわ」 レンの言い分はもっともと言える。ルイズは年の近い姉が飼っている動物をよく褒めてやっていたのを思い出した。指示されたことを聞いたときは特に。 何か喜ぶ物を与えれば、この生意気な使い魔ももっと主人を敬うようになるかもしれない。そんな打算も浮かぶ。 「まあいいわ。最初だけ特別よ? 優しいご主人様に感謝なさい。で、何が欲しいのよ?」 「そうねぇ。ここはやっぱり甘ぁ~~い物が欲しいかしら!」 組んだ両手を頬に持っていって、屈託の無い満面の笑みを浮かべるレン。ぶりっ娘ポーズである。 ルイズは驚いた。その仕草で初めてレンが年相応の幼女に見えたからだ。甘い物を欲しがるレン、それをちょっとだけ可愛いと思ってしまった。だがそんな思いはできるだけ顔に出さずに質問を続ける。 「甘いものって、あんた猫でしょ?」 「猫である前に乙女ですわ。あんな肉ではお腹は膨れても心が潤いませんの」 「贅沢な猫ねえ、あんた」 しかしレンの言い分は理解できるルイズだった。しっかりご飯を食べても甘いものは別腹。これは全ての女性の総意と言っても良いだろう。 甘い物、と聞いてルイズの脳裏に自分の好物が思い浮かんだ。そういえば最近あれを食べていない。この使い魔にやるのはちょっと勿体無い気もするが、この使い魔にあげるという名目で王都まで食べに行くのも悪くない。 そこまで考えてルイズは大声で期待のこもった瞳でこちらを見ているレンに言う。 「レン! クックベリーパイを食べに行くわよ!!」 前ページ次ページゼロの白猫
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/206.html
そして三度ルイズの部屋 「………マスター……バーボン」 「誰がマスターよ…」 医務室から2回も猛ダッシュかましたルイズを追って部屋に来たキュルケであったが 椅子に座り真っ白に燃え尽きているルイズを発見した……したのだが現在ヤケ酒を付き合わされる形となっている。 (まったく…ルイズを見にきたのはついでだったのにこれじゃあ本命のダーリンと話もできないじゃない) 彼女にとってギーシュとプロシュートの決闘は互いの命を賭けたものでありギーシュが死んだ事についてはあまり気にしてないらしい。 グビィ 「って瓶から直接飲むのはどうかと思うんだけど…」 どこぞの吸血鬼一歩手前の英国貴族を彷彿とさせる飲みっぷりにドン引く 「うるひゃぁ~~~い…もうほっろいてよぉ~~~」 スデに呂律が回っていない、どう見ても酔っ払いです、本当に(ry 「へっほうっていっへもへーひんがひほくをほろひてたられふむはけがらいらない」 (訳:決闘っていっても平民が貴族を殺してただで済むわけが無いじゃない) 「ふはいまのへきひんはひゅひんのへきひんなんらから ふろしゅーほがひーしゅをやったってほとはえんぶわらひのへひにんにあんのよひゅるへぇ~~」 (訳:使い魔の責任は主人の責任なんだから プロシュートがギーシュを殺ったって事は全部私の責任になんのよキュルケぇ~~) キュルケの目には何かもうルイズの頭の周辺に暗い|||線が見えている。 人これをバッド・トリップと言う 「あんふぁももっほほみなさいよ~ ほへともわらひのはけがほめないっていふのぉ~?」 (訳:あんたももっと飲みなさいよ~ それとも私の酒が飲めないっていうのぉ~?」 (マズイ…このままではルイズが潰れるより私が先に潰される!) 酒瓶片手に迫るルイズ。それを見て撤収しようと決意を決め機嫌を損ねないように優しく話しかける。 「ほ、ほら、明日はせっかくの虚無の日なんだからもう寝た方がいいわよ…ってルイズ?」 「…………zzz」 「やっと潰れたようね…」 自分の部屋に戻ろうと立ち上がるが、パンチドランカーの如く足元がおぼつかない。 「やば……!」 足をもつらせ床に向け倒れる。それだけならまだいい、問題は床にルイズが開けた酒瓶が転がっていることだったッ! キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 「死亡」(脳挫傷) 二つ名―「微熱」 床に向け倒れながらそんな言葉が頭に浮かんだ。 ガッシィーz_ン だが、何かに腕を掴まれ頭と酒瓶2cmのところで止まり再起不能にはならなかった 「あら…ありがとダーリン♪」 「その呼び方は止めろ」 腕を掴んだ瞬間、勢い余って直触りをしそうになったのは内緒だ。 「助けてくれたお礼に貴方を私の部屋に招待したいんだけど?」 「……遠慮しておく、一服盛られるのは御免だからな」 「あら、失礼ね。…でも毒よりも凄い物があるわよ」 「……わらひのふはいまひかっへにあにあってんのよぉ~~~」 (訳:……私の使い魔に勝手に何やってんのよぉ~~~) ビクゥ! というような音が聞こえんばかりに声の方向に振り向く…がルイズは酒瓶片手に爆睡している。 「……寝言…ね」 これ以上粘ってルイズが起きては洒落にならないと考え部屋を後にする。 去り際にしっかりプロシュートへのアプローチを忘れていないあたり流石だ。 コルベールとオスマンの前にルイズが居る。 そこに、コルベールがプロシュート並みのプレッシャーを放ちながら質問をしてきた。 「質問です…貴方の使い魔が無罪か?有罪か?当ててみてください」 「ひ…一思いに有罪で…」 「NO!NO!NO!NO!NO!」 「む…無罪…?」 「NO!NO!NO!NO!NO!」 「れ、連帯責任ですかぁ~~?」 「YES!YES!YES!YES!『YES!』」 「もしかして『処刑』ですかぁーーッ!?」 そしてオスマンが顔を手で押さえながらダメ押しのように言い放つ 「YES!YES!YES!"OH MY GOD!"」 「嫌ぁぁぁぁぁあああ!」 ベッドから跳ね起き辺りを見回すが、コルベールとオスマンは居ない。 「また、嫌な夢……」 最近色んな事がありすぎて本気で死にそうだ。主に精神的な意味で。 昨日、キュルケが部屋に来た事は覚えてる…でもそこから先の記憶があまり無い 頭を捻って考えていると「くぅ」と音がした (お腹すいたー…) そう思いながらベッドから降り己の使い魔に着替えを手伝わせようとするが 「あれ…服着てる」 これもどういう事か考えているとまた「くぅ~」と音がしたのでとりあえず空腹を満たす事を優先させる事に決めた。 プロシュートを引きつれ食堂に向かうが何かが何時もと違っていた。 自分が通ると他の生徒達が悉く道を明け渡してくれる。そして目をこちらに向けようとしていない。 そりゃあ最初の頃所構わず爆発を起こしてた時はこんな事もあったけど、それはもう昔の事だ。 そして小さな声で聞こえる話声。何時もなら大体「ゼロのルイズ」であったが今日は違っていた。 「悪魔憑き」 そんな言葉がたくさん耳に入る。けれども少なくとも自分はそんな事知らない。 頭の上に「?」を浮かべながら食堂に入っていくとキュルケとタバサが先にいた。 キュルケの顔色が少し悪そうだったけど気にせず近くに座り例の如く始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから食事を始めた ――が、横で顔色悪そうにしてたキュルケは正直いって呆れている (私でも二日酔い気味なのに呂律が回らないぐらい飲んでたこいつがどうしてこうも平然としてられるのよ…) そんなキュルケの思いを無視し完食ペースで食べすすんでいく。 (うわー…あんな重そうな物よく食べれるわね…ってワインまで!? 昨日あれだけ飲んどいてまだ足りないっていうの?……恐ろしい娘ッ!…もーダメ、ギブ) 顔色をさらに悪くさせたキュルケが無言で席を立ち去るが、当のルイズは見ちゃいねーようで次々と食べ進んでいく。 しばらくして戻ってくると見事に完食を果たし満足そーにしているルイズを見てなんだか知らないけど『ムカついた』 『ムカついた』から少しシメておく事にする。というかシメる。 「ちゃんと味わっておきなさいよ。…なにしろそれが貴族として最後の食事になるかもしれないんだから」 ガシャン! 音のした方を見るとフォークを床に落としたルイズが小刻みに震えながらキリマンジャロ5万年前の雪解け水を飲んだかのよーに泣いていた。 (やりすぎたかしらね…) 一方こちら『悪魔憑き』ことプロシュート 食堂に入る前しっかりルイズから「メイジ殺したんだからご飯抜きに決まってんじゃないの!!」と言われた為暇そーにしてる。 例によって食堂入り口前に立っているが食堂に入ろうとする生徒は (何であそこに『悪魔憑き』が居るんだ…下手な事すれば年を奪われてギーシュみたいに殺される…ッ!) と思っており誰一人食堂に入れないでいた。 もっとも、『暗殺対象』『向こうから挑んできた』『目標が居るが場所が特定できず無関係の者も居る』等以外無駄な殺しはしないのであるが 彼らには知る由も無いのでこういう状況になっている。 そしてその『悪魔憑き』に遠慮なく向かっていくのはご存知ピラニ……シエスタだ! 「あ…昨日はその…助けて頂いてありがとう御座いました… でも、すいません…私なんかを助けるために大変な事になってしまって…」 心底申し訳なさそうに頭を下げるシエスタだったが 「オメーが気にする事でもねぇよ。何よりあいつらの目が気に入らなかったからな」 「目…ですか?」 「オレ達チームがボスに反逆した理由の一つがそれ…いやこいつはオメーには関係ねぇ事だったな」 「…?そういえばどうしてこんな所に立ってたんですか?」 「まぁ決闘が原因ってわけでもねぇが飯抜き食らっちまってな」 「そういう事でしたら…恩返しというわけではありませんが今度は是非いらしてください」 ギーシュの遺産(財布破棄済み)があるため断りそうになるが『恩には恩を、仇には仇を』というリゾットの流儀を思い出し―― 「世話になる」 その返事を受け真っ白な笑みをシエスタが返したが、その笑みがプロシュートにとってやけに眩しく感じられた。 (ナイスガッツ!) そして周りの生徒達もこの時ばかりは生まれて初めて平民に感謝していた。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/135.html
前ページ次ページゼロとさっちん 「あの人たちは嫌い」 とルイズの言われて、「うん」とさつきは静かに頷く。 二人の視線の先には、最後の宴を優雅に楽しむ貴族たちがいる。そうだ。最後なのだ。 もうすぐ、明日にもあの人たちはみんな死んでしまうのだ。 ここはアルビオン王国の首都ロンディニウム。 ルイズと彼女の使い魔であるさつきは、ここにアンリエッタ王女の使いとしてやってきていた。 目的は「手紙の回収」である。 革命騒動に王党派は風前の灯と見られていて、その任務は圧倒的な困難なものになると思われたが―― 任務そのものは半ばだが成功した。 どうやって貴族派に囲まれた城に潜り込もうかと思案のしどころであったが、アルビオン行きのフネを襲った空賊がアルビオンの王党派のフネであるという幸運があり、さっさと城に入り込めて、回収もできた。 そうなればとっとと帰ってもよかったのだが。 「今夜が最後の宴だ。この国を訪れた最後の大使として、ぜひともその宴に出てくれたまえ」 とか言われたら、でないわけにはいかないのだった。 そんなこんなで宴で適当にアルビオンの貴族たちの相手をしていたさつきであったが、壁の花をしているご主人様が気になって話しかけた時、最初の言葉を言われたのだった。 しばらく黙り込んでいた二人であったが、やがてルイズは。 「ねえ、サツキ……いくらあなたでも、五万もの大軍はどうにもならないわよね」 と聞いた。 「いくらなんでも一人では……対軍レベルとか対城レベルとかの魔術とか体術があるってシオンに聞いたことがあるけど……」 自分にはそういうのは使えない、とさつきは言う。 というか、対軍とかってどういうのだろうかと思ってたりする。拳の一撃で軍隊をぶっとばせたりするのだろうか。 いつかはさつきにもそういうことができるかもしれない、とシオンは言っていたが。 『さつきの資質は過去の二十七祖に匹敵します。力を積み重ねればあるいは彼らに並べる存在規模を得ることができるかもしれません』 (ごめん。さっぱり解からないよ、シオン) エジプトの錬金術師と路地裏同盟を組み、死徒になった当初よりは知識を得ている彼女ではあるが――つい最近まで一般人だった悲しさか、相棒のいうところの神秘だのなんだのというのは、まったくもって把握しづらいのである。 それでもあれこれと聞いていると、吸血鬼の能力とかがなんとなく解るようになってはきているのであるが……。 「相棒、あんまり気に病んだって仕方ないぞ」 今の相棒が、彼女の背中から語りかけてくる。 鞘に入れてたら喋れないので、この魔剣デルフリンガーは少し鯉口を切った状態になるように細工をしていた。 どうしてそういうことをしているのかというと、さつきが何をするのもハルケギニアでは不安だから、助言者としてのデルフリンガーを必要としているからであるが。 「貴族だの王族だのってのは、民のために戦うために存在しているんだ。その民からそっぽむかれちゃあ、意義もないってことなんだろうさ」 「だから、ただ滅びるために戦えるの?」 貴族としての意義を失うというのはどういうことは、そういうことなんだろうか。 ルイズは黙って二人の話に耳を傾けていたが、 「ウェールズ様だけでも、なんとか説得したいわ」 と呟いた。 さつきは「うん」とだけ答えた。 ◆ ◆ ◆ 「結婚式を?」 宴も終わり、すべてが寝静まっているかのような城の中でぼんやりと外を眺めていたさつきは、通りがかったワルドに話しかけられた。 ラ・ロシェールで力試しとばかりに決闘を挑まれたが、二人の力は互角であった。 グリフォン隊の隊長として体術と魔法をともに練り上げてきた熟練のスクエアメイジたるワルド子爵と、死徒として力をつけつつあるさつきは、以来、認め合っている仲である。 まあ、つい先日の話ではあるのだが。 その短い時間にさつきはワルドの心中に激しい何かを抱えているのを感じ取ったが、あまり気にしていなかった。怖いものを身の内に隠しているというのならば、彼女の好きな遠野志貴がまさにそうだったし。彼の眼差しがずっとルイズに向けられているのも解っていた。 だから。 (ルイズさんがとても気になるんだね) と好意的に捉えていたりする。 そんなこんなで話しかけられたのならば相手もするし、その内容が彼女の〝ご主人様〟に関わることならば積極的に関わろうとするのにも吝かではないのだった。 で、ワルドの用件というのが「ルイズと結婚式をあげる」というものであったりするわけだが。 「結婚式――明日には開戦なんじゃないですか?」 「時間はあると思うよ」 ワルドにいわれると、そういうものかとさつきは思う。 思ってから。 「戦場の結婚式かー」 呟いていた。言葉からして、とてもロマンがある。 「立会人には、ウェールズ殿下を頼んである」 「王子様に?」 それは、ますますロマンだ。 「君はどうする? 私としては、ルイズの使い魔――というよりも、友人として是非とも参加して欲しいのだがね」 「そうですね……親戚のおねえさんの結婚式とかは出たことあるけど、お友達の結婚式というのはまだないですし」 なんといっても、まだ高校生なのだ。 少し思案してから 「……私みたいなのでもいいのなら――あ、やっぱりこっちの結婚式でも、エスコート役の人っているんですか?」 「エスコート? いや、いないな」 「ブーケを投げたりとかもしないですね」 「投げる? それもしないな」 「……うーん」 実に残念そうに首を傾げていたさつきだが、やがて「うん」と強く頷いた。 「解りました! 私も結婚式に出席します」 「そうか。それは本当にありがたい」 ワルドは笑った。それは実にいい笑顔に見えた。 さつきも笑った。 明日にこの城の人たちはみんな死ぬ。 そんなところで結婚式を挙げるなどというのは。、あるいは不謹慎なのかもしれない。 だけど、とさつきは思う。 そんな時だからこそ、最後に祝福された恋人たちがいてもいいのではないかと。 きっと二人はこの日のことを決して忘れないだろう。 祝福する人たちも、それを想いながら死んでいくのだろう。 それはとても悲しくて辛いことなのかも知れないが―― 「あ、ひとつだけ条件があります」 思い出したように、しかし真摯な言葉と眼差しでさつきはワルドを見た。 ワルドもまた静かな眼差しで応える。 「ルイズさんを、絶対に幸せにしてください」 勿論だとも、と子爵は言った。 それは……約束の言葉だった。 前ページ次ページゼロとさっちん
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/55.html
Fate/stay nightからセイバー召喚 ゼロの使い魔(サーヴァント) 00プロローグ ゼロの使い魔(サーヴァント) 01第一話 ゼロの使い魔(サーヴァント) 02第二話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2201.html
ゼロと使い魔の書 第一話 地球にひっぱられて、上着から体がぬけた。仗助のいる屋根が遠ざかり、茨におおわれている赤煉瓦の壁にそって落下した。 八角形のドームと七つの尖塔をもった[茨の館]の上空につよい風がふいて、…… 目を開くと、鋭い日光に目を刺され僅かに眉を顰めた。 自分の身に起きた一番最近の記憶は、自らの存在意義でもあった「やるべきこと」が終わり、幕引きを行おうとした最後の最後で東方仗助との死闘に敗北し、 全身の骨を砕かれ茨の館から落下した。それで間違いない。 ならここはどこなのか。上半身を起こし、そして怪我が治っていることに気がつき、自分の目の前に広がる光景に言葉を失った。 緑色の海だった。 微かに吹く風が草を揺らし、草原は一つの生き物のように自身を波打たせていた。 神はいない。自分はそう考えていたが、どうやら単に怠慢で残酷で、そして気まぐれだったためにいないと勘違いしていたらしい。 自分は肉体という魂の枷から放たれてようやく、行きたいところに行かせてもらっているのだ。 ここがどこで、なぜこんなところにいるか、疑問は瑣末なものであった。 ただ、草原を眺めていた。 どれほどの時間が流れたか。 突然、背中に衝撃を感じ、前のめりに地面に突っ伏した。細々とした草が顔をくすぐった。 「平民のくせに!無視するなんていい度胸じゃない!」 振り返るとピンク色の長髪を揺らした少女が仁王立ちしていた。腕や胴回りなどはかつて自分に好意を抱いていた異母妹と同じくらい、ドーナツの輪をくぐれそうなほど細い。 その少女と自分を、黒いマントを羽織った少年少女が憐憫の情を含んだ嘲笑を浮かべ囲んでいた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出して、しかも無視されちゃ形無しだな!いや、『さすがゼロ』と言うべきか?」 誰かの一言で、嘲笑は哄笑に変わった。 「ミ、ミスタ・コルベール!もう一度、召還のやり直しを要求します!」 少女は最後の希望、という表情で、周囲の中で唯一笑っていなかった中年男に言った。 「ミス・ヴァリエール……こう言ってはなんですが、自分を知りなさい……もう一回やる時間が……あると思うのですか?今のあなたに」 温厚そうな中年男は、しかし苦りきった顔で少女に言った。 「それがあなたの使い魔です。契約しなさい」 中年男に負けず劣らず嫌悪の表情を浮かべた少女は、首を振りながら自分に近寄ってきた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 唇の動きからいって、そう言ったのだろう。耳では聞き取れなかったほど早く小さく呟かれていたが、唇の動きを読める自分にとっては口元が視界に入っていればよかった。 少女は体が触れるぎりぎりのところまで近づくと、首をそらし自分を睨み上げた。 「屈みなさい!」 膝を折ると、少女は唇を重ねてきた。 「・・・・・・終わりました」 少女が呟くと同時に、左手の甲に熱を伴う強烈な痛みが走った。 左手を切り離さなければ死んでしまう、と思ったところで熱は引いていった。 見ると、不思議な模様が左手に刻まれていた。 「あんた、名前は?」 「……蓮見琢馬」 ここはどこで、目の前の人間達はなんなのか。 考えなければならないことが山積みであったが、自分には関係なかった。 見渡す限りの草原に、自分は立っている。 その事実の方がはるかに重要だった。 前ページ次ページゼロと使い魔の書
https://w.atwiki.jp/smithkeion/pages/451.html
ゼロ 概要 バンド
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/161.html
トリステイン魔法学院本塔最上階学院長室 そこにどこからどう見ても仙人としか言いようの無い老人が椅子に座っていた。 動きは無い、ボケているようにも見えるが、まぁただ単に暇なだけだ。 微妙に震えている気がするが多分ボケてはいないッ! 「学院長、き、緊急事態です!」 そこに飛び込んできたのは見事なU字禿を持つコルベール。 「………………」 返事が無い (遂にボケたかッ!?)と本気で心配になる。 「……はッ!何か用かの?」 (とうとうか…) だが、緊急事態の内容を思い出しオスマンのボケの可能性の心配を消し飛ばす。 「ヴェストリの広場で、決闘を始めた生徒が…」 その言葉をオスマンが遮る。 「貴族というのは暇な生き物が多いようだのぉ。で~誰と誰がやらかしとるんだね?」 正直「ま た 決 闘 か !」という反応である。 「一人はギーシュ・ド・グラモン。相手はメイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔の平民ですが…」 「いかんのぉそれは…メイジと平民では勝負にならんではないか、止めてきなさい」 だが次のコルベールから発せられた言葉はオスマンを驚嘆させるに十分であった。 「それがその…もう決闘は終わったようなんですが…」 「なんじゃ、それを早く言わんかね」 「いえ…その…実は……『死者』が出まして…」 「何じゃとぉぉおおおお!!」 その報告にオスマンがブッ飛んだように立ち上がる。無理も無い、メイジと平民の決闘などメイジが勝つに決まっている。 だから、オスマン自身も必然的に死んだ方は平民の使い魔と判断した。 「まったく…ミス・ヴァリエールも変り種とは言え使い魔の召喚に成功したというのに…」 「違います、死者は……ミスタ・グラモンの方でして…」 『オスマンも月まで吹っ飛ぶこの衝撃!』 本日最大級のオスマンの叫びが轟いた。 「なんとしたことじゃ…」 今までメイジと平民が決闘をしたとういう事すら前例が無いというのに 平民がメイジに勝った挙句それを殺したという異常事態に生きる魔法辞書オスマンも精神的動揺を隠せない。 「それで、どうやってその平民の使い魔がメイジに勝ったんじゃ」 「決闘の原因は分かりませんが…それを見ていた生徒達の話によると 見えない何かがミスタ・グラモンの首を掴み中空に持ち上げた瞬間…信じられないかもしれませんが『老化』させたというのです」 「なんと…その使い魔はメイジではないのじゃろう?」 「杖など持っていませんし…それに老化させる魔法など聞いた事もありません」 「ふむ…召喚した時とか何か妙な事は無かったかの?」 「…実は、ミス・ヴァリエールが使い魔の儀式を終えた後 その使い魔が何かを叫んだと思ったら私が急に倒れてしまって…」 その瞬間オスマンの目がカッと開かれ叫んだ 「なぜそれを早く言わぁーーーーーーん!!」 「気が付いた時は特に異常は無かったものですから…」 だがオスマンは奇妙な違和感に気付く。 「ミスタ・コルベール…髪……いや何でもないぞい…」 視線をコルベールから反らし唯でさえ少なかった毛髪がさらに減少している事に目を押さえ泣く。 「じゃが、どうしたもんかのぉ…」 平民がメイジを殺す、普通の状況なら即刻死刑というとこであるが、決闘という場合は前例が無い。故に対処が分からない。 「…ともかく話だけでも聞いておかねばならんようじゃな その使い魔とやらを呼んできてくれんか。それとミス・ヴァリエールもじゃぞ」 「ミス・ヴァリエールは決闘の最中に気を失ってしまい医務室で治療中です」 「なら無理に呼ぶわけにもいかんようじゃの…ともかくその使い魔だけでも来るように伝えておいてくれんか」 暗い闇の中でワルキューレに囲まれたあいつが居た。 自分はそれを止めようとして必死にそこに向け走る。でも距離が縮まらない。 ワルキューレが武器を構え動きだし叫ぼうとする。でも声が出ない。 それぞれの武器が振り下ろされるのを見た。その光景に思わず目を閉じた。 しばらくして目を開ける、ワルキューレ達はどこにも居ない。 でも、私の足元にあいつがボロ雑巾のようになって倒れていた。 決闘をすると知っていても何もできなかった。何もできなかった自分に無性に腹が立って泣きたくなった。 自分が殺したようなものだ。そう思った。 だけど、自分の手に杖が握られているのに気付く。 勇気を出して恐る恐るあいつの体を見る。 あいつの体はワルキューレの持っていた武器で傷つけられたものじゃなかった。 これは、爆発を受けた傷だった。さっきまでワルキューレに囲まれていたはずなのにそれが不思議に思えた。 杖を手に持っていてあいつが爆発を受けて倒れている。そう思った瞬間何かが繋がった。 まさかと思った。あいつを助けようとして自分の魔法が失敗したせいで殺したんじゃないかと。 必死になってそれを否定する。でも状況がそれを肯定していた。 自分の頭の中で様々な声が聞こえる。だけど聞こえる内容は一つだけだった。 『お前が『ゼロ』のせいであいつを殺した』―と 蹲り耳を押さえそれを否定する。けれど頭の中の声は消えなかった。 泣きそうになるのを必死になって耐えた。でも無理だった。 ――――そして泣きに泣いてる最中急に意識が遠くなった。 目を開けると医務室の天井が見えた。 (…………夢?) 周りを見る。キュルケとその親友のタバサがそこに居た。 「やっと起きたの?寝ながら泣いてたわよ貴方」 そういえばさっきから少し目が痛い。 「私…どのぐらいここに?」 「丸一日」 状況が今一掴めない。何故自分がここに居るのかという事も。 夢の内容を思い出そうとして肝心の事に気付く。 「そうだ…決闘!一体どうなったの?」 そう聞くと、キュルケが何か言いにくそうに答え始めた。 「落ち着いて聞きなさいルイズ。あまり言いたくないんだけど…」 だがタバサが途中から口を挟む 「死亡確認」 『ザ・ワールド!』 そんな声と共に何も考えれなくなった。 さっき見た夢の内容と現実との状況が重なる。 また意識が遠のくけどギリギリのとこで踏みとどまる。 気が付けば医務室を飛び出し自分の部屋に走り出していた。 部屋に飛び込み視点が一点に集中する。 ベッドの上にあいつの服が洗濯され置いてあった。 その瞬間あいつを自分が殺したという実感が沸いてきて―また泣いた。 ベッドに倒れ込み服の上で泣く。 だがそこに後ろから声が掛かる 「…人の服の上で何やってんだオメーは?」 泣き顔のまま後ろを振り向き…一瞬にして涙が止まる。 そこには教員の服を着たプロシュートが居たッ! 「………何時から見てたの?」 「部屋に入ってくるなりいきなり泣きはじめたとこからだ。つーかシワになるからどけ」 「…この服と今着てる服は一体何よ?」 「こっちに来てからそればかりなんでな ついでに洗濯したとこだ。この服は乾くまでの代わりだ。」 スーツを着るプロシュートを尻目にルイズが無言で部屋を出る。 そして部屋に来る時以上の速度で医務室に走り出し、ドアを勢いよく開ける。 「急に飛び出してどこ行ってたのよ」 キュルケが半ば呆れ気味に言い放つ。だが当のルイズはそれを無視しタバサに詰め寄る。 「謀ったわねタバサ!何が『死亡確認』よ! 生きてるじゃない!思いっきり生きてるじゃない!!何?何か私に恨みでもあった!?」 もうキュルケの髪より顔を赤くしたルイズに詰め寄られるタバサだったが何事も無かったかのように一言だけ言い返す。 「最後まで話聞かないのが悪い」 「うぐ……じゃあ何で『死亡確認』なのよ」 「だから、ほら…ギーシュがね」 『スタープラチナ・ザ・ワールド!』 またそんな声が聞こえた気がして思考が止まる。 「えぇーーーーーーーーーーーー!?」 だが、今度は気付けば思いっきり叫んでいた。 ←To be continued 戻る< 目次 続く